中期経営計画

トップインタビュー 代表取締役社長 大塚信行

4年目を終えた中期経営計画(2019~2023年度)の進捗について

半導体設計関連事業、システム・サービス事業の販売が伸長。より効率的な営業活動を展開しています。

2022年度は、下期から半導体市況が悪化し、国内顧客の投資が抑制されたことによるメモリーテスターの需要減退や、グループ会社である台湾のSTAr Technologiesのプローブカード販売が減少したことなどにより、テストソリューション事業が低迷しました。

一方、EDAソフトウェアの販売や設計サービスを手掛ける半導体設計関連事業は、半導体の高性能化に向けたお客様の中長期的な投資を背景に販売が拡大しました。また、新型コロナウイルス感染症対策の緩和による個人消費や設備投資の回復期待などから需要が高まっているシステム・サービス事業の販売も好調に推移しました。特にこれらの事業では顧客ベースの拡大に向けた取り組みに注力していますが、感染症対策の緩和に伴って展示会の開催頻度が以前の状況に戻りつつある一方で、WebマーケティングやWeb会議の活用も浸透するなど、リアルとオンラインを組み合わせたハイブリッドな営業活動を行っています。それにより業務効率も一層高まっており、半導体市況が悪化している状況下においても業績に貢献してくれました。

これらの結果、連結売上高は2021年度を上回ることができました。一方、将来の成長を見据えた研究開発への注力や事業拡大に伴う人員増などが影響したことから、営業利益は減益となりました。

2023年度については、上期は不透明な状況が続くものの、下期には半導体市況が改善すると予想されます。それに伴ってテストソリューション事業が回復し、半導体設計関連事業とシステム・サービス事業は引き続き好調に推移すると見込まれるため、増収増益を予想しています。2022年度はROEが7.3%へ低下しましたが、2023年度は現中期経営計画の目標である8%超を達成できると手応えを感じています。

今後の事業成長に向けて注力するポイントについて

グループ会社間やセグメント間の連携とサプライチェーンマネジメントの強化に注力します。

2021年度より継続して取り組んでいるグループ会社間の連携をさらに強化していきます。半導体設計関連事業においては、イノテックのEDAソフトウェア部門とモーデックの連携の効果がより一層具体化し、売上拡大などの成果が出ています。2023年度においてもこのようなセグメント内の連携やグループ会社間の協働・協創をさらに具現化し、実績に結びつけていきたいと考えています。

新規分野への取り組みについては、アイティアクセスの自動販売機向けクラウド決済システムや、レグラスのAIカメラシステムなど、この数年で成長した製品・サービスの新たな用途展開を図ります。新規分野の開拓や新たなソリューションの提供のために必要となる技術や人材、マーケットを持つ企業のM&Aについても引き続き検討していきます。

また、直近の課題の1つとして捉えているのがサプライチェーンマネジメントの強化です。メーカー機能の強化により自社製品比率が高まるなか、部材調達が滞れば大きな機会損失につながります。改善の兆しはあるものの、2023年度も一部の部材の調達難は続くことが予想されるため、引き続き安定調達に向けた取り組みに注力していきます。

ESGに関する取り組みについて

人事制度や働く環境の整備を進め、従業員のエンゲージメント向上を図ります。

当社は、マテリアリティの1つに「ヒューマンキャピタルマネジメント」を掲げ、従業員が持つスキルや経験こそが価値ある資本であるという認識に基づき、人材への積極的な投資を行っています。

女性活躍推進への取り組みについては、当社の全女性従業員とグループ面談を行い、働く環境や働き方の改善についてヒアリングしました。それらの意見を参考にしながら人事制度の改定を検討していきます。

また、従来から実施している社員アンケートとは別に、従業員エンゲージメント調査を新たに実施しました。従業員が会社のことをどのように考えているかを調査・分析し、会社と従業員が同じ方向を向いて、持続的な信頼関係を築けるように努めていきます。

2022年度はそのほかに、インフレ手当の支給決定や、従業員に対するインセンティブとして自社の株式を給付する株式給付信託(J-ESOP)と譲渡制限付株式(RS)報酬制度を導入しました。当社の株価や業績と従業員の処遇の連動性をより高め、株価および業績向上への従業員のモチベーション向上や、高い専門性を持つ優秀な人材の確保を通じて持続的な成長を図ります。

足元の半導体市況は依然不透明な状況にありますが、中長期的に半導体、エレクトロニクス業界は、ますます拡大していくと予想されます。当社グループは、従業員のエンゲージメントを大切にしつつグループにおける協働・協創を進め、独自のソリューションを提供することで、2023年度を最終年度とする中期経営計画の目標達成、そしてその先のさらなる成長を目指してまいります。

2023年6月

代表取締役 社長執行役員大塚 信行