コラム「N」と「E」の違い

わたしたちのINNINGS製品はすべてインテル社の組込み向けCPU製品群を採用しています。

基本的には、みなさんがお使いのNote PCやDesktop PCなどに採用されている製品と機能的な差異はほとんどありません。
では、どんな部分が異なるのかを今回は書いてみたいと思います。

インテル社は世界最大のCPUメーカーであり、たくさんの種類の製品を提供しています。
その応用範囲は広く、例えばバッテリーに最適化されたタブレットからHPC用途に使用される高性能のサーバー向けCPUまで、
また短寿命の商用製品から産業インフラの過酷な環境下での10年以上の信頼性を要求される製品まで、
十数種類の使用条件に対応した半導体製品を提供しています。

インテル社の製品スペックが掲載されているサイトで、例えば組込み用途(=Embedded options Available)の
ATOMプロセッサーの主だった使用条件(=Use conditions)を列挙すると
・Automotive
・Communications
・Embedded Broad Market Commercial Temp
・Embedded Broad Market Extended Temp
・Industrial Commercial Temp
・Industrial Extended Temp
・PC/Client/Tablet
といった項目に分類されています。

* https://ark.intel.com/ を参照

組込み用途なのに「PC/Client/Tablet」があるのを不思議に思う方も多いのではないでしょうか?
できるだけ詳しく説明をしていきます。

英語は苦手なので上記サイトの日本語のページを見ていきましょう。

* https://ark.intel.com/content/www/jp/ja/ark.html を参照

「Embedded options Available」=「組込み機器向けオプションの提供」
「Use conditions」=「使用条件」
となっています。

「組込み機器向けオプションの提供」の説明文には
“組込み機器向けオプションの提供とは、インテリジェント・システムおよび組込みソリューションの長期にわたる入手性を約束する製品であるという意味です。
製品の認定および使用条件の適用は、製品リリース認定 (PRQ) レポートに記載されています。詳細については、インテルの担当者にお問い合わせください。”
という記載があります。

「組込み機器向けオプションの提供」に該当する製品は、長期供給が約束されています。
(前回のコラムにも書きましたが、現在はインテル社が発表してから15年間です)
ただし該当製品の「使用条件」は、そちらの項目を参照する必要があるということになります。

「使用条件」は、インテル社がその製品を設計/製造/試験する際に想定したユーセージモデルになります。サイトの説明文をみると
“使用条件とは、システムを使用する場合の環境条件および動作条件のことです。SKU に固有の使用条件の詳細は、PRQ レポートをご覧ください。
現在の使用条件の情報については、インテル UC (CNDA サイト)* をご覧ください。”という記載があります。

もちろん弊社はインテル社のパートナーですから、採用した製品のPRQレポートも
入手していますが秘密情報にあたるのでここでは概要だけをご説明します。
たとえば「使用条件」が「Industrial Extended Temp」の場合は、24x365x10yで、
そのうちシステムの稼働率をxx%として、温度がyy度の場合に算出した故障率が
インテル社の基準を満たしているというような感じの内容が記載されています。

では「使用条件」が「PC/Client/Tablet」だった場合は、どうなるでしょうか?
ずっと電源を入れっぱなしのPCやTabletなどは通常はないので、
システムの稼働率は8時間=33%ぐらいでしょうか?
温度も室温程度を想定していると思われます。

INNINGS製品の代表的な製品=VX-6020に搭載しているCPUは“Intel Atom® プロセッサー E3845”です。該当製品の仕様のページには「使用条件」が
“Automotive, Industrial Commercial Temp, Industrial Extended Temp, Embedded Broad Market Commercial Temp”となっています。

*https://ark.intel.com/content/www/jp/ja/ark/products/78475/intel-atom-processor-e3845-2m-cache-1-91-ghz.html

VX-6020

例えば「組込み機器向けオプションの提供」に該当するATOMプロセッサーで“インテル® Celeron® プロセッサー N3350”の該当製品の仕様のページには
「使用条件」が“PC/Client/Tablet”となっています。

*https://ark.intel.com/content/www/jp/ja/ark/products/95598/intel-celeron-processor-n3350-2m-cache-up-to-2-4-ghz.html

*ATOMプロセッサーなのにブランドネームはCeleronなのです。紛らわしいですね。

世の中には多くの「産業用PC」と呼称する製品を提供している企業があります。その製品の中には「組込み機器向けオプションの提供」に
該当するという条件だけのCPUを搭載した「産業用PC」や「組込み用CPUボード」も多く存在します。
わたしたちINNINGSの製品は「使用条件」も、お客様のユーセージモデルを考慮して搭載するCPUを選択しています。

もしお客様の製品が「24時間稼働を前提とするシステム」やエッジコンピューティングのように高信頼性が求められる用途が増えていく中で、
「故障原因を追究されるようなシステム」だった場合に「組込み機器向けオプションの提供」には該当するけど、
「使用条件」が「PC/Client/Tablet」のCPUを搭載する製品を採用したとしたら…
不具合が起きた場合に返ってくる回答は「その条件で使用したのであれば故障して当然です。」もしくは「原因不明」でしょうか?

みなさんも「産業用PC」や「組込み用CPUボード」を選択する際には、
供給期間や価格だけではなく、システムのユーセージモデルや搭載CPUの「使用条件」にも、
注意して選択してみてはいかがでしょうか?

では、次回のコラムもお楽しみに。

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